上場するためには、監査法人による会計監査や、証券会社による引受審査、証券取引所による上場審査などにパスしなければなりません。その過程では、膨大な上場申請書類を作成したり、証券会社の審査部からの質問に対して限られた時間の中で回答しなければならないなど、上場準備特有のスキルが求められます。
しかしながら、上場準備のスキルを身につけることができる場所は、上場準備企業や監査法人の株式公開支援部、証券会社の公開引受部・審査部などに限られており、上場準備は、その詳細を学びたくても学ぶことができない分野の一つとなっています。このため、上場準備スタッフは構造的に不足しがちであり、これにより上場が延期になったり、最悪のケースでは、上場そのものをあきらめざるを得ない企業もみられます。
そこで上場準備スタッフにお勧めしたいのが、日本IPO実務検定協会が開発した「IPO実務検定」の受験です。IPO実務検定は、上記のような事態を回避・解消するため、上場準備に関する専門知識を持ち、上場準備を企業内部から支えることができる人材を早期に育成するべく創設された試験です。IPO実務検定は、上場準備の実務を遂行するにあたって必要となる知識をまんべんなく、総合的に問う本邦初の試験であり、豊富な実務経験を持つ上場準備の専門家が中心となって膨大な上場準備実務を分析・体系化することにより、実務に根ざした問題を中心に構成されています。したがって、IPO実務検定に合格するための勉強をすれば、短期間で自然に上場準備の実務能力を身につけることができます。IPO実務検定の受験勉強を通じて学んだことは、現在上場準備企業で働く方や、上場関連のビジネス(監査法人、ベンチャーキャピタル、証券会社など)に携わる方にとっては仕事にダイレクトに役立つことはもちろん、これから上場準備の世界に身を置きたいと考えている未経験者や学生にとっては、上場を目指す成長企業に転職・就職するためのツールとしても役に立つはずです。
試験科目 | 項目 | 標準試験の主な 出題内容 |
上級試験の主な出題内容 (標準試験の出題内容に加えて下記の内容) |
倫理・社会的責任 | 経営者や実務担当者が持つべき倫理、ガバナンスと企業価値 |
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制度・コンプライアンス | 上場の意義、 メリット・デメリット |
上場の定義・意義、メリット、デメリット | |
市場の種類 | 新興企業向け市場を中心に証券市場の種類 | ||
市場別上場審査基準等 | 各市場毎の形式基準、実質基準 | 子会社上場基準、市場別上場維持基準 | |
プレイヤー | 上場をサポートするプレイヤーの役割 | ||
会社法概論 | 機関、株主の権利、株式を中心とした会社法の基本的知識 | 定款、種類株式、登記を中心とした会社法の基本的知識 | |
金融商品取引法概論 | 上場という観点を中心とした金融商品取引法に関する基本的知識 | インサイダー取引規制 | |
コンプライアンス | 人事・労務に関する法令等の概要 | 人事・労務に関する法令等の知識、知的財産に関する法令等の基本的知識、税務に関する基本的知識、公益通報者保護法、個人情報保護法、産業廃棄物処理法、下請法、景品表示法等その他の法令の基本的知識 | |
上場準備実務 | 上場準備のスケジュール | 上場に向けてのスケジュールとプレイヤーとの関係、資本政策や管理体制整備のスケジュール | |
戦略とリスク | - | 戦略とリスク(リスク対応及び開示)についての基本的知識 | |
コーポレート・ガバナンス | コーポレートガバナンス・コード、機関設計、組織的経営、三様監査総論、反社会的勢力との関係遮断 | 報酬、三様監査、IR、利害関係者に対する施策、関連当事者等との取引や関係会社の整理 | |
内部管理体制 | 内部統制システムの構築、内部統制報告制度の概要、業務プロセス、中期経営計画や予算管理 | 財務報告に係る内部統制の評価 | |
ディスクロージャー | 財務諸表のつながり | 招集通知、決算スケジュール、事業報告、有価証券報告書、有価証券届出書、目論見書、内部統制報告書、四半期報告書、貸借対照表・損益計算書項目等の主な論点 | |
証券会社対応 | - | 引受審査までの流れ、引受審査資料 | |
証券取引所対応 | 上場までの流れ、取引所審査 | Ⅰの部、Ⅱの部、市場の変更 | |
資本政策 | 資本政策立案時の注意点、各手段の特徴 | 資本政策と企業価値把握、ストック・オプション |